地形の恩恵をうけた熊谷の水
熊谷の中心街を歩いていると、坂道に出会すことがほとんどない。
というのも熊谷というまちは、「氾濫平野」という、過去の度重なる洪水によって土砂が堆積した平坦な土地の上にあるからだ。
そんな平坦な熊谷に唯一ある酒蔵を構えたその場所は、少し様子が違う。
緑豊かな木々の中緩やかな坂道を下る先に、
熊谷唯一の酒蔵の権田酒造はある。
この緩やかな坂に、酒造りの秘密が隠されている。
熊谷は荒川と利根川の大河に挟まれていることで、伏流水、つまり大地に濾過された清浄な地下水に恵まれている。
熊谷の水はおいしい、と言われてきた歴史があるが、
それはこの地下水が豊富にふくまれていることによる。
権田酒造のある三ヶ尻は、「櫛引台地」という小高い場所にあり高低差がある。
この地形が、湧き水として地下水を汲み取りやすい環境となっている。
高低差のある台地の一番低い場所に浅井戸を堀り、天然のおいしい湧き水を汲み上げることができるその場所に、酒蔵はつくられたのだ。
こうして、江戸末期の嘉永年間創業以来、酒造りに欠かせない水は、地形に恵まれたおいしい地下水を活用してきた歴史がある。
風情ある家屋の中、あふれる人情味
訪れるといつも温かく迎えていただけるご家族や従業員の方々。
取材ということでお伺いすると、緑茶を出していただいた。
「きれいな緑色だね」「ねぇ、絶対おいしいと思ったんだ」
緑茶の鮮やかな色の話で話が弾む。
話をしていると、まるで親しい親戚の家に遊びに来たようで、心地よく和みゆっくり時間がながれていく。
そして時代を感じるこの家屋。大正時代に造られており、築100年を超える。風情あふれる外観と土間のある店内はノスタルジックな雰囲気に包まれる。
大切に受け継がれているものがあると、家屋からも感じられる。
魂を込めた酒造り
そして、酒造りに欠かせないもう一つの材料が米である。
食べて美味しい米の品種があるように、呑んで美味しい米の品種がある。
酒造好適米といい、12年かけて開発された「さけ武蔵」という品種は熊谷で多く生産されている。
この米のうま味を味わえるのが権田酒造のお酒の特徴。
温度によって味が変わり、家庭での食事や会食の際など、さまざまなシチュエーションで嗜むことができる。
そんな権田酒造の酒造りは手作りの工程が多い。
特に味の決め手となる麹作りでは、一晩中ー時間ごとにチェックして品質を最高にする努力を怠らない。
最後に、
「手作りならではってどんなところでしょうか?」
と尋ねた。
「お酒の味を左右する繊細な作業ができるところ」とご回答いただいた。
機械がアベレージで操作するところを、人の感覚でピンポイントで手を加えることができる。
きめ細かい上質な仕上がりは、まさに手作りならでは。
さらに付け加えるなら、権田酒造を訪れた者こそ説明できるものがあった。
それは、
一歩店内に入ると感じる、ご主人やご家族・従業員の方々が創り出すおもてなしの空気。
そして一言言葉を交わすだけで生まれる、体温を感じるような血の通った交流。
これこそ、機械では生み出せない「手作りならでは」ではないだろうか。
もしまだ訪れたことがないという方は、ぜひ一度訪問していただきたい。
「手作りならでは」の真髄をきっと肌で感じていただけることと思う。
住所 | 埼玉県熊谷市三ヶ尻1491 |
電話番号 | 048-532-3611 |
営業時間 | 9:00~18:30 |
定休日 | 日曜・祝日(店頭販売など急遽お休みになることがあります。) |
ホームページ | https://www.gondasyuzou.com/ |
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